捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 エグバート自身、家を離れて生活していた時期がある。この国の風習であるし、納得して受け入れたけれど、冒険者としての生活は耐えがたかった。行動を共にしてくれた側近候補達も、二度とやりたくないとげんなりしていた。
 そんな生活を、貴族令嬢にさせているなんて、とんでもない話だ。国家間の問題に発展しかねない。
「弟の所業、兄として詫びよう――そなたの娘を助けるためにはどうしたらいい?」
「なんと! 殿下の寛大なお申し出に感謝いたします――」
 目の前で深々と伯爵は頭を下げる。彼の様子にエグバートは満足した。この男とベルライン家を上手く利用すれば、クライヴを蹴落とすことができるかもしれない。
 これは好機だ。
 もし、この時。エグバートがもう少しだけ慎重だったなら。
 伯爵の言い分には、いろいろとおかしなところがあるのに――いや、おかしなところしかないのに気付いただろう。けれど、彼は目を背けた。見ないふりをした。
 自分がクライヴに負けているという事実を認めたくなかったのかもしれない。
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