捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 そりゃそうだろう。イオレッタだって、彼女の立場になるのはごめんこうむりたい。
「本当、お前のその顔が嫌いなんだよ」
 たしかに、妹のシャロンと比べたら、イオレッタの容姿は地味だが容姿のことを口にするのはどうなのだ。
 茶色の髪に、髪より濃い色合いの瞳。絶世の美女ではなく、それなりに整った顔立ち。絵にかいたような中肉中背、平凡中の平凡である。
 たしかに、トラヴィスの隣に立ったら釣り合わないかなーとちょっぴり思わないわけではなかったけれど、真正面から「顔が嫌い」はいくらなんでもひどい。さらに、「本当」なんて形容詞までつけてくれちゃうし。
「私の顔がお嫌いでも、両家の決めた婚約です。諦めてください」
 相手を選べるのなら、イオレッタだって他の人がよかった。
「精霊使いとしての能力を持たないお前に、それを言えると思うのか?」
「トラヴィス様には不満でしょうけれど、諦めていただくしかないんです」
 この世界では、ありとあらゆるものに精霊が宿る。
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