捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「私の力は、必要ないものだと思っていたので――それに、私の居場所は、もう家にはありませんから」
 精霊師、と聞いた国王はイオレッタを引き留めたいようなそぶりを見せたけれど、イオレッタはそれを拒んだ。
「無理強いするな。イオレッタは家を追い出されて、プラディウム王国に来ることになった。彼女の意思に任せてやってほしい」
「……そうだな、そうすべきだろう」
「戻る、とは断言できませんけれど――力になれることがあったら、呼んでください。この国が母国であるのには変わりがありませんから」
 馬車の扉が開かれ、引っ立てられていくベルライン家の面々を見送りながらイオレッタはそう口にした。
 トラヴィスの目が、こちらに向けられる。
 ちくりと胸が痛んだのは、気のせいではない。彼に恋をしていたというわけでもないけれど――でも。それでも、込み上げてくるものがあるのはどうしようもない。
 そんなイオレッタの背に、クライヴの手がそっと添えられる。その温かさに、なんだか泣きたいような気がしてならなかった。
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