捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 今まで見たことがないほどの人数が、治療所に詰め掛けている。どうやら怪我人が多数発生したらしい。
「イオレッタ、当番の日じゃないのはわかってるんだけど、回復魔術をお願いできない?」
 治療用のポーションや包帯を持ったアリスが声をかけてくる。
「もちろん、かまいませんよ!」
 この状況を見て、黙って座っていられるはずもない。手を洗ってから、治療所に飛び込んだ。
 最初にイオレッタの前に、連れてこられたのはブライアンであった。ゴルフィアに到着した初日、イオレッタを強引に勧誘しようとしたあの男である。
「すまない、頼む」
 目の前に座ったブライアンの肩がざっくりと切れている。
「アルディ、お願い」
『まかせて!』
 イオレッタの耳には「任せろ」と聞こえるけれど、精霊使いの素質を持たない一般人には単なる鳴き声にしか聞こえない。
 アルディが背中の毛を逆立てると、ブライアンの方が視線をそらした。アルディの針で、床に張り付けられた時のことを思い出したのかもしれない。
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