捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「今日の夜は、『眠れる子羊亭』で御飯にしようかなあ。どう思う?」
『辛いのはイヤだな』
 薬草を捜してくれているアルディにたずねれば、嫌という答えが返ってきた。
 イオレッタには確認しようもないが、食べるものによって魔力の味が多少変わるらしい。
 精霊にとって術者の魔力は最大のご馳走でもあるから、最高に美味しい状態で食べたいというのも納得。
 辛めの料理が多い『眠れる子羊亭』で食事をしたあとは、イオレッタの魔力も辛くなるのだとか。フェオンは辛口の魔力が好きだから、アルディには夕食前に魔力を分けた方がいいかもしれない。
 なんて考えながら薬草を採取していたら、あっという間に昼食の時間である。
 今日の昼食は、途中で買ったパウンドケーキ。パウンドケーキが昼食になるのかなんて考えてはいけない。甘いものは正義。ケーキだけでもお腹いっぱいになるのだから問題ない。
 小さな火をおこし、携帯用の茶道具で温かい紅茶を用意する。そして、いよいよお楽しみのケーキにかぶりつこうとした時だった。
< 47 / 320 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop