捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 正面の踊り場にはステンドグラス。色ガラスを通して降り注ぐ色とりどりの光は、まるで伯爵家の令嬢となったシャロンを祝福しているかのようだった。
 隣にいる母も、ぽかんとステンドグラスを見上げていたから、夢見心地だったのだろう。
 異母姉だと紹介されたイオレッタは、こちらを冷たい目で見ていた。本当の妹がやってきたのに、なんでそんな目で見るのだろうと思ったことを覚えている。
「お姉様には、トラヴィス様はふさわしくありませんわ」
 清純な花嫁にはふさわしくない邪悪な喜びにあふれた笑みを浮かべながら、シャロンはそう口にした。
 一目見た時、トラヴィスのことを好きになってしまった。
 きちんと整えられた金髪は艶々で輝いていて、緑色の瞳はシャロンを見たら嬉しそうな光を浮かべてくれた。
 今まで見たこともないような上品な服を身に着けた彼は、どこからどう見ても立派な王子様。シャロンの手を取って、キスを落としてきた時にはそのまま天に召されるのではないかと思ってしまった。根性で地上に踏みとどまったけれど。
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