捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「そうだな。シャロンが精霊使いとして目覚めなくても、アレを始末する方法はいろいろ考えていたんだが」
「お父様、アレだなんて言ってはいけませんわ。お父様の血を引いていることには違いないのですから」
 と、一応父をたしなめているが、家から追い出された貴族令嬢が無事でいる可能性はほとんどない。
魔物に食べられてしまったか悪人に捕まって売り飛ばされてしまったか。いずれにしても、シャロンには関係のないことだ。
「そう、私こそがこの家の正当な跡取りですもの」
 シャロンはうっすらと微笑んで、指の先に魚の姿をした精霊を呼び寄せる。水の精霊イオリア。シャロンが契約した精霊だ。
 水色の魚は、どこから見ても幻想的で美しい。もし、イオリアと契約できていなかったら、今頃はトラヴィスとイオレッタの結婚式を見守る側だったかもしれない。
 父は様々な手を考えているとは言っていたけれど、一度決まった婚約をなかったことにするのは難しい。
「この家を立派に盛り立てて見せますわ、お父様」
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