絶対にずっと好きだと証明しましょう
ユーゴは早速、彼女の浮気はこれが初めてじゃないんだけどな、と語り始め「今までは俺が怒るとりか子が謝ってきて結局仲直りっていうパターンだったけど、トランクスの男を目の当たりするとさすがになあ」と小さなグラスに次がれた冷酒をぐびりとあおった。

「でも、結局ユーゴさんの元に戻るってことは、本当に浮気なわけですよね。ユーゴさん、優しいからつい甘えて遊んじゃうのかな」
「楓ちゃん、女ってそんなにずるいの?」
「女って、ていうけど男の人の方が浮気する多いと思うんですけど。妻帯者だってチャンスがあれば不倫しちゃうし」

ここで話の流れを読んだのか、樹がトイレに立った。

「俺はしない」
「樹はしてると思う」

ユーゴが驚いたように楓を見た。

「そうなのか?」
「多分」
「いいのか?」
「よくはないけど」
「樹はいいなあ。自分だけを見てくれる楓ちゃんみたいな彼女で」
「でも浮気現場を見たわけじゃないし。さすがに樹の部屋にパンティ姿の女性がいるのを目撃したら心折れるかもしれません」
「りか子はさ、父親がすぐに新しい彼女を作っちゃうから心の底で男女の関係は続かないと思っている。うまくいっていても長続きはしないって考えが染みついているから不安なんだよ。だから期待しすぎないように、のめりこまないように、もしものときのダメージを軽減するべく気持ちの保険を掛けているんだと思う」
「それって前に話してくれた樹の仮説と似てますね」
「経緯は似てるけどそれで導き出された結果は逆だな。りか子は愛情が続くことが信じられなくて、逆に樹は信じたいんだと思う。これは楓ちゃんの愛に掛かっているな」
「軽くヘビーなプレッシャーをかけてきますね」

自分はどこまで樹を追いかけていけるのだろう。
楓は唇をきゅっとつぼんだ。
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