時をこえて、またキミに恋をする。
いつもわたしには失礼で意地悪なくせに、こういうときだけ優しくしないでほしい。


吊り橋効果で…好きになったらどうするの。


「とりあえず今から外に出るが、屋敷の出入口には門番がいて、そこは通れねぇ」

「じゃあ、どこから出るの?」

「大丈夫。こっちに俺や壱がガキの頃から使ってる抜け道があるから、そこから外へ出る」


都子姫と幼なじみの宗治と壱さんは、幼いときからこの屋敷で遊んでいたんだそう。

だから、都子姫に仕える前から屋敷のことに関しては詳しかったらしい。


「びぃ、こっちだ」

「…あっ。待って、宗――」

「宗治…?」


早朝の静かな屋敷の庭園に、宗治の名前を呼ぶわたしの声が響く。


――でも、そんなはずがない。

だって、まだわたしは宗治の名前を呼んでいないのだから。
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