茜空を抱いて
日々、あなたと
***



帰宅した後、窓から差し込む夕日に呼ばれ、私はまたその日も、階段を上った。



「あ、おかえりアミ」

『……今帰ってきたわけじゃないけどね』

「でも、おかえり」



ただいま、なんてそんなくすぐったい会話らしいことはまだできない。ユウの座っている少し下、どうしようか迷う。
そんな様子を見透かした彼は、少し微笑んで私に声をかけた。



「今日もちょっと話してくでしょ?」

『………なんで勝手に決めんの』



先回りされたことが、少しだけ恥ずかしくて。
イエスかノーを答える前に、私は不器用にユウのとなりに腰を下ろした。
するとまた、ユウが息を吐いて笑う音。



「アミは素直でいいね」

『どこが。馬鹿にしてる?』

「今日の学校はどうだったの」



ユウはいつも、独特の間合いとペースで話を進める人だった。
それを咎めることも面倒で、私は諦めて受け流す。



『つまんなかったよ、今日も』

「そうか、それは残念」



少しの寂しさが滲む声。本当に残念に思ってくれてるのかな、なんて期待をする。


その時、ふと訪れた沈黙。


それを埋めようとしたのか、はたまた純粋にそうしたかったのかわからない。
だけど私は急に、ユウにもう少し近づきたくなった。



座り直す、肩が触れないぎりぎりの距離。
そんな風に近付いた私を見下ろし、ユウが聞いてくる。



「……寂しい?」

『……そーいうわけじゃない』

「もっとこっち、来なくて平気?」



悪戯っぽく呟かれたその台詞。
とてもじゃないけど恥ずかしくて、少しも反応できなかった。



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