茜空を抱いて
***



その次の日も、またその次の日も。
私の気持ちは大きくなる一方で。



図書館での勉強を中断し、気分転換に外に出たある日の夕方。ふたりで並んで歩く、なんだかデートみたい。
こっそりと見上げれば、その瞳は今日も穏やかに前を見ていた。



『ユウ』



あなたの名前を口にする。
その視線がこちらに降りてくる瞬間を見るのが、好きだった。



「なに、アミ」

『ユウって彼女とか、好きな人とかいんの?』



いつもは素直になれないくせに、こういうことはどうしても遠回しにできない。
はっきりと、ひとつも誤魔化さずに知りたい欲をぶつけた私から、あなたは困ったように視線を逸らした。



「…………そんな目で見ないでよ」



ユウの声が小さくなる。感情を押し殺しているかのような、苦しげな吐息が混じる。
私とまた距離をとろうと、ふらついた足取り。それに気がついて一歩、あなたの方へと近付いてみる。



「………近いから、アミ」

『じゃあユウは私のこと嫌い?』

「なんでそうなるの」



お互い、食い気味に交わした言葉。
その揺れる視線を見ていれば明らかだ、私の気持ちなんてあなたはもう、



『………わかってるくせに』



私のそんな呟きに、ユウが顔を背ける。
彼の眼鏡の縁だけが、夕日に煌めく。



「………戻ろうか。まだ今日の問題、残ってるから」



急に進む方向を変えたいつものスニーカー。
私を待たずに図書館へと戻るその背中を、しばらく見つめる。


どんなに距離を詰めても、ユウは私を受け入れようとしなかった。


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