君にかける魔法
「得意なこととか、真面目になにかやったとか無かったし、このまま社会に出るにな自信がなかったからかな。」

「…今は自信、ありますか?」

少し食い気味に聞いてしまった。
自分と重なる部分があると感じてしまった。
私もこれといった何かを持っていない。
確かに今、正社員です、働いてくださいって言われても果たして何ができるのだろうか。


「ないよ。全然ない」

4年頑張っても、無いんだ。


「自信がないのは仕方がないの。でもね、」

望月さんは私の方を向いて、


「悪いことじゃないよ。自信なんかなくても」

「えっ」

優しく笑った。

「楽しいよ。」


望月さんを見ていて思った。
自信がなくても、何も無くても、それは悪いことじゃない。

自分を否定してしまうことが、何よりも自分を苦しめることに繋がるのだと。





「白紙、美園さんだけだったんだけど、何かある?」

「いえ、まだありません。」

「…まぁ、まだ2年生。もう少し考えても良いと思うよ」

進路指導室に呼ばれた。
目の前には出席番号と名前だけが書かれた紙。
私は目の前にある鉛筆と紙をせんせいのほうへ、すっと戻した。

「はい、考えます」

今はまだ考える時間が欲しい。
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