君にかける魔法
ふと我に返ると、既にナツキはいなくなっていて。

終わった…

私はあの人から解放された…

お母さんが私の部屋に入ってくる。
お母さんの顔を見て、目から涙が溢れた。

私はなんて馬鹿なんだろう。

「頑張ったね…」

お母さんは私を小さな子供かのように抱きしめる。
実はお母さんには付き合っている人がいたことを言っていなかった。
ナツキがここまでの一連の流れをお母さんに話してくれたらしい。


「まず落ち着くまで、いくらでもゆっくりしていいからね。」
「ありがとう、…お母さん。」

私はバイトをやめた。
店長に制服を返しに行くと、青葉さんも辞めたと知った。
それなら続けても、と思ったが一旦全てをリセットしたい気分だった。

ずっと頭がぼーっとして、何にも手につかない。
ご飯を食べることさえ、忘れてしまって私は短期間でかなり痩せてしまった。

外にもなかなか出られなかった。
全ての人間があんな人じゃないって分かってるけど、なぜか狂気を感じてしまっていた。


よく考えると、原因の全てが私のような感じがしてしまった。
私は付き合っている時、たくさんの『好き』を青葉さんにもらった。
でも私は、自分が1度も『好き』を伝えたことがなかった。
伝えても伝わらない、思いが通じ合わない。
< 108 / 154 >

この作品をシェア

pagetop