君にかける魔法
ーーーーー
『レズかよ。気持ち悪っ、』

気持ち悪い、か…

「ナツキ、連絡とってないの?」
「うん。あんなだったから、ゆっくりさせてあげたい」


あの日、明らかにモモの様子がおかしくて私はこっそりあとをつけていた。
通報されれば、ただのストーカーになるところだった。

話し声が聞こえてくる…

あの人、見たこと、


思い出した、

あの人学園祭にいた。

私と変わらないくらいの身長?
少しあっちの方が高い。

その男は、徐々にモモの方に近づいていく。

後ろ姿でも分かる不穏な空気。


私はその男の前に立つ。
その口から放たれる言葉全てがウザい。

ある一言で私の何かがプツンッと切れた。


あぁ良かった。
こんなところで、昔一瞬習ったボクシングが役に立つとは。

私の右手の拳は、その男の頬に直撃し、男は口の端から血を流していた。

その男がいなくなり、モモを見た。


小柄な体は震えていて、目に光が無くて、今にもどうにかなってしまいそう。



私たち、出会わなければ良かったのかな…



モモの家から1人歩く。

私の今持っているこの感情は、他者から気持ち悪いんだ。

私が好きとか言っちゃったから、全ての歯車が崩れていったのかな。




私はあなたに何を求めない。

ただまた笑って、普通になりたい。


ーーーーー
< 110 / 154 >

この作品をシェア

pagetop