君にかける魔法
部屋から出てきた私に驚きつつも、お母さんは動画サイトの生配信のニュース番組をスマホで見ていた。

急な大寒波で停電。
交通網は麻痺。

「ミコ、大丈夫かしら…」

私は自室に居すぎたせいで気づいていなかったけど、ミコは彼氏とクリスマスの旅行に行ったらしい。
行先的に、停電のエリアでは無いし大丈夫なことを願う。
お母さんも職場が少し遠いため、影響は無いそう。
いつもは電車を使って通勤しているが、今日は車で出勤するらしく、少しすると仕事に向かってしまった。


部屋に戻り、毛布に包まれながら動画を見ていたらスマホの画面が一気に真っ黒になる。

(充電切れ、か…)

暇になってしまった私はふと、自分の勉強机の引き出しを開けてみた。
特に何かを探していた訳では無い。

(懐かしい、)

いつだろう。
恐らくこの時は中学生だろう。
ハルカと撮ったプリクラ。
最近はLIN〇はしているけど、こんな状況なことは言えなくて言っていない。
笑顔でピースしながら映る姿は今のこの表情とは別人のよう。


その隣の引き出しには、


「ううっ……」


3人で撮ったプリクラ、


シワを伸ばしたチア部大会のチケット、
一緒に買ったアクリルキーホルダー、




楽しかった思い出が全て走馬灯のように思い出される。
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