君にかける魔法
背の高い影がどんどん遠ざかる。
取り残される………ナツキだ。

私は気づくと足を止めていた。
青葉さんが不思議な表情でこちらを見ている。

「どうしたの?」

動揺なのか、何なのか分からない感情が一気に私を支配していく。

私は繋いでいた手をすっと解いた。

「すみません。友達から連絡が来たので失礼します。今日はありがとうございました。」

頭を下げ、振り返った私は走れるはずもない格好で走った。

青葉さんごめんなさい。
今はこんな素敵な時間よりも、あの子の支えになってあげる時間を作りたいです。






「ナツキっ!!」

全速力で走った。
私に気づくとナツキは顔を背ける。

「…なんでいるの」

泣いているってバレバレだ。
綺麗な顔が台無しだ。
もう熊沢君の姿は無かった。

「何があったの。…大丈夫だよ。」
私はナツキをギュッと後ろから抱きしめた。
きっと泣き顔なんて見られたくないよね。
ナツキのすすり泣く声にもならない声が大きくなる。

「…っぅ。はぁ…ぐすっ」


しばらく経ってから、ナツキは泣き止んで「ありがとう」と、帯のところにあった私の両手を解いていく。

「…全部私のせいだったよ」

無理に作った笑顔で私にそう告げた。
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