君にかける魔法
「ソノ!こっち!」

ナツキは熊沢君の所へ、私は青葉さんのところへお互い向かった。
分かれ道の所で、「一番可愛いよ!」とナツキに言ってもらった。
「ナツキの方が…」って言おうとしたら手を振って行ってしまった。
「可愛い」か…
その一言に少し鼓動が早くなるのを感じながら青葉さんと合流した。

「お待たせしてすみません。」
「いや、大丈夫だよ。…似合ってる、可愛い!」
ストレートに放たれる言葉にあたふたしてしまう。
その様子を見て柔らかくニコッとされた。

「もうすぐ始まるよ。何か屋台でも見ようか」
「はいっ」
無言で差し出された左手。
ドキッとしながらも、私も右手をスっと前に出した。

私は慣れない浴衣、慣れないシチュエーションでこんなに緊張しているのに、そんな素振りを全く見せず常に柔らかい笑顔を見せてくれる青葉さん。
これが大学生と高校生の違い?
なんて思いながら、すらっとした、彼の背中を追いかけるように歩いた。





「綺麗でした!とても!」
「はははっ、そんなに?でも良かったよこれて」
花火大会が終わった。
既に21時半を回っていた。
ずっと一緒にいたからか、話すことへの緊張感も無くなり自然と話すことが出来ていた。
「帰ろうか。送るよ。」
「ありがとうございます」
自然と手を繋ぎ合う。
よく分からないけど、きっとこういうことが恋というか付き合うというか…

なんて考えてしまった。


あっ……



人通りが少ない橋の上に見覚えのある金髪…

肩が震えてる。
奥にいるのは…

暗いけどあの身長の高さ…


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