Cherry Blossoms〜思惑の交差点〜
Hero vs Dark
本田凌(ほんだりょう)という名前で榎本総合病院に潜入している公安警察・九条桜士(くじょうおうし)は、今日も病院での勤務を終え、住んでいるマンションの一室に入る。

「今日も忙しかったな……」

そう呟いたものの、桜士の顔には疲れは全く見られない。むしろ頰を赤く染めて、どこか浮き足立っているように見える。

桜士の頭の中にあったのは、一緒に救急科で働いている四月一日一花(わたぬきいちか)のことだ。

「今日も四月一日先生、大活躍だったな」

今日も榎本総合病院の救急科には、多くの患者が救急車で運ばれてきた。救急車で搬送される人は入院が必要ない軽症の人もいれば、命に関わるような大病の人もいる。

お昼前に四十代の女性が搬送されてきた。女性の意識は朦朧としており、まともに会話ができない状態だった。

「大丈夫ですか?」

「どこか痛みますか?」

桜士、そしてウガンダ出身の小児外科医のヨハン・ファジルが必死に声をかけるも、女性はボウッとするだけで何も反応しない。その時だった。
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