【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
一応、婚約は白紙になっていなかったから、その時はどうこうするつもりはなくて。

ただもし、リシャール殿下との婚約が解消されたら。
君が君だけのものに戻ったら。
殿下の側近なんて辞めるから、俺の手を取って欲しいと、伝えたかったんだ。

だが、殿下は必死に君の手を掴んで離さなかった。
君が『ご自由に』と、離しかけた手を両手で掴む為に、伯爵令嬢と繋いでいた手を振り払ったんだ。
あまり、あの頃の事は思い出したくない。


俺は平気そうな顔をして、シャルル王子に話す。


「木曜日辺りに、あの女に会います」

「僕も行こうか?」

「いや……興味があるのなら、お止めしませんが」

「侯爵令嬢が平民を苛めても、何の罪にも問われないのに、ね。
 クロエ嬢を悪役にして何をしたいのかな、気になるのはそこかな」

「……出来るだけ聞き出してきますよ。
 じゃあ次は金曜に報告します」

「悪いね、頼んだよ」


俺に頼んだよと、言うが。
シャルル殿下は顔を出しそうな気がする。

このひと、見かけによらず気性が荒いんだ。
顔出したついでに、口が出て、手が出て。

『平民を苛めても、何の罪にも問われない』
なんて、ならなきゃいいけどな……

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