【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
シャルル殿下は、この女の事をフランソワ侯爵令息に一任したと仰っていたが。
目の前の、クロエを貶めようと画策している女をからかうのも一興かと思っただけだ。


義姉上に関するあれこれには、いつもなら一番に動くリシャール殿下は隣国へ行かれていた。
来年の春に学院を卒業した殿下は次期国王陛下として、本格的に王族の御用を勤められる。
今回はその前哨戦として、親戚筋の隣国へ国王陛下の名代として赴かれたのだ。

正式な書状は卒業してからになるが、義姉クロエとの婚姻式への出席を口頭で招待することにもなっていらっしゃった。



「一体、誰が僕を傷付けた、って?」

「クロエでしょ、貴方は侯爵家に引き取られてから、あの女の理不尽な虐待に耐え続けていたのよね?」

「何かわかったようなこと言っているけど、全然わかってないね。
 僕は義姉上から虐待なんて受けていない」

「隠さなくてもいいよ。
 受けたことは恥なんかじゃないんだよ。
 あたしに全部話してみて?
 そしたらジュールは楽になる……救われるから」


僕の話なんか聞いていなくて、一方的な話しぶりのこの女がおかしくて、僕はうきうきしていた。


「へぇ、救ってくれるの?
 どうやって?」

話に乗ってきた僕に、女は嬉しそうに答えた。


「だから話してみてよ、慰めてあげる……」

「あのさ、男に慰めてあげる、なんて言うのはさ……」

僕はゆらりと立ち上がった。
場所は中庭のベンチ。

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