魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

(このままじゃ、本当に連れていかれる!)

 幸い足は早い方だから、なんとか捕まらずにすんでいた。
 だけど、流石に、6人もの大人を相手にしいるせいか、しだいに息が切れてきて

「うわっ!?」

 すると、ひとしきり走って路地を曲がった先で、誰かとぶつかった。
 尻もちをついて、恐る恐る見上げれば、そこにはいたのは──ライオンの顔をした大男。

「ッ……」

 とっさに後ずり、慌てて、反対側に逃げようとした。だけど、背後には、また別の幹部たちが現れて

(ッ……囲まれた!)

 絶体絶命──そんな言葉がよぎって、ふと、お父さんとお母さんの顔を思い出した。

 無意識に体が震え出せば、声すら出せなくなる。

 このまま連れていかれたら、どうなるんだろう。もし、アランじゃないってばれたら、火あぶりや釜茹でだけじゃすまないかもしれない。
 
 いや、火あぶりにされた時点で、もう死ぬよ! だって、俺、人間だもん!

「さぁ、鬼ごっこは終わりですよ、アラン様」
「……っ」

 すると、ライオン男が俺に近づいてきた。
 手には鋭い爪が付いていて、あんな手でつかまれたら、きっと、大怪我だ。

 だけど、狭い道路で挟み撃ちされてるからか、逃げ場なんて一切なくて、

(あ、もうダメだ……!)

 そう思って、キュッと目を閉じる。
 だけど、その時

 ──ドォォォォン!

 と、あたりに大きな音が響き渡った。
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