魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

 ──お化け屋敷。

 その言葉を聞いて、場の空気が一気にざわめいた。生徒たちの中には、青くなったり、びくついたり。

 そのお化け屋敷の話は、俺達が暮らす、この桜川という町では、とても有名な話だった。
 
 ──四丁目の洋館には、幽霊が出る。
 
 いつからか、そう言われるようになった、そのバカでかい屋敷は、もう何年と空き家になっている家だ。

 昔はどっかのお嬢様が、執事とメイドと一緒に暮らしていたらしいけど、その頃の面影なんて一切なくて、今は荒れほうだいの廃墟。
 
 少し前までは、格安で売りに出されていたこともあったらしいけど、住む人住む人、すぐに引っ越してしまうらしく、今では誰も寄りつかなくなった、いわくつきの屋敷だ。

「うえー……マジかよ。持っていかれたって、どういうこと?」

「それが、昨日サッカーやってたら、またまた屋敷の方にとんでっちまって……取りに行こうとしたんだけど、あの家に入った瞬間、スゲー異臭がしたんだよ!? あれ絶対、死体とか埋まってるって!!」

「ヤダー! やめてよ、変なこと言うの~」

 本田君の恐怖体験をきいて、数人の女子たち|悲鳴をあげた。

 異臭がするとか、なにそれ怖すぎ! そりゃ、持っていかれたって言いたくなるよな?

 結局、本田くんは、それ以上は進むことが出来なくて、サッカーボールは諦めることにしたらしい。

 買ってもらったばかりのボールをなくして、親にも叱られて、散々だったといっていた。

「おーい、雑談はいいから、片付けするぞー」

 すると、怖い話で盛り上がる俺達の話に割りこんで、クラブ顧問の先生が声をかけてきた。

 もうすぐ、チャイムが鳴る。

 俺達は、さっと気持ちを切りかえると、全員で片づけをして、クラブ活動を終えた。

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