魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
「それからは、可愛いものが好きだってこと、隠すようになったんだ。ランドセルも黒にしたし、誕生日プレゼントも、可愛いものはねだらなくなって……だから、部屋だって普通の部屋」
ポツポツと、家族に隠している理由をアランに話した。するとアランは、しばらく黙り込んだあと
「そっか。好きな物を隠さなきゃいけないって、ツラいね。でも、ちょっとだけうらしいかな」
「うらやましい?」
「うん。だって、心配してくれるってことは、ハヤトのことを大事に思ってるからでしょ? 人と違うことをしたら、仲間外れにされることはよくあることだから、きっと君のお父さんとお母さんは、とても優しい人たちなんだね。僕のお父さんとは大違いだ」
「アランのお父さんて、魔王の」
「うん。会うのは、年に数回で、ずっとほったらかし……だったのに、いきなり来たかと思もえば『もう、人形遊びはやめろ』だよ! しかも、シャルロッテとカールのこと壊そうとするし。きっと僕が、いつまでも女の子らしいことしてるのが気に入らないんだろうね」
「もしかして、それで、家出してきたのか!?」
「うん! だって、いくら親でも、僕の大事なもの壊そうとするんだよ? それに、いつか魔界から出ようって思ってたし、ちょうど良かったよ! 魔界って、暗くてジメジメしてて、可愛いものもほとんどないし、だから、ずっと人間界に来てみたいって思ってたんだ!」
そう言って、ニッコリと笑ったアランは、家出している子供って感じは全くしなかった。
どちらかいえば、遊園地に遊びに来た子供みたいな。
まぁ、あんなにカッコよくて、頼りになりそうなシャルロッテさんとカールさんもいるし、なにより、アランが強すぎるし、普通に家出してもやっていけそう。
「あ、そうだった。座っていいぞ! なにか、飲み物持ってくる」
すると、ふと思いついて、俺は床にしかれたカーペットの上を指さし、アランに座るようにすすめた。
王子様にすすめるには、あんまりかもしれないけど、ソファーとかないし仕方ないよな?
「えーと、麦茶かオレンジジュース……て、魔族って何を飲むんだ? いっとくけど、人の生き血とかはないからな!?」
「人の生き血? 吸血鬼か何かと勘違いしてるのかな?」