魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

勇気をだして



(あれ……私……?)

 ふと、目を覚ますと、私──花村(はなむら) 彩芽(あやめ)は暗い部屋の中にいた。

 さっきまで、威世(いせ)君と話していけど、あれから、どうなったんだっけ?

 そう思って、ゆっくり体を起こす。

 冷たい床には、絨毯が敷いてあった。他にも、テーブルとか、イスとか、ベッドとか、生活に必要なものは全てそろってる。

 だけど、窓には出られないように鉄格子(てうごうし)がついていて、閉じ込められているのは、すぐに分かった。

「ここ……どこ?」

 何が起こってるのか分からなくて、すごく不安になった。

 目には、じわじわと涙が浮かんでくる。

 だけど、そんな私の服を、くいっと何かが引っ張った。

(え? なに?)

 と、思って下を見れば、そこには、ウサギのぬいぐるみがいた。

「きゃぁぁぁぁ!!」

 だけど、びっくりして、思わず叫んじゃった。

 だって、ぬいぐるみが立ってる!?
 しかも私の服を、引っ張った!?

「あれ? あなた……もしかして、威世くんの?」

 だけど、そのウサギさんが、誰のぬいぐるみなのか分かって、溢れそうな涙が、少しだけひっこんだ。

 この子、威世君のぬいぐるみだ。

 前に落とした時は、妹のだっていってたけど、あれは嘘で、本当は可愛いものが好きで、裁縫が趣味で……

 あれ? でも、この話、どこかで……
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