魔界の王子様は、可愛いものがお好き!

ニセモノとホンモノ


「お帰りなさいませ、アラン様!」

 魔王城の最上階。

 その広間では、アランが帰ってきたと聞いて、魔王直属の配下たちが集結していた。

 ヘビ男やカエル女などの幹部たちは勿論、そのほかの魔族たちまで。数にすれば、五十は超えているかもしれない。

 そして、その部屋の中央で、配下達に頭を下げられたアランは、玉座に座る魔王を見つめていた。

 一ヶ月ぶりの再会。

 いや、今、アランに化けている颯斗にとっては、初めて目にする魔王の姿だ。

(絶対、ばれないようにしないと)

 アランに成りすましながら、俺は、じっと魔王をみつめた。

 魔界に向かう途中、俺はアランと計画を立てた。その計画を成功させるためにも、絶対にバレるわけはいけない。

「お父様に、お願いがあります」

 アランの声で、アランになりながら、俺は魔王に話しかけた。すると魔王は

「皆の前では、魔王様と呼べと言ったはずだ」

「……へ?」

 えぇぇぇ!?
 ちょっと待って、そんな決まりあったの!?
 
 アラン、お前いつも「お父様」って言ってたじゃん!? 呼び方指定されてるんだったら、前もって言っとけよ!!

 いきなり、とんでもない指摘をされて、内心震えあがった。

 やばい、いきなりピンチだ。
 だけど、魔王は、アランがニセモノとは気づかなかったらしい。

 そのあと『願いはなんだ』と、さっきと変わらない声でいわれて、俺は、内心ほっとしつつ、魔王に、二言目を発する。

「人質にしている人間の女の子を、人間界に帰してください」

「あぁ、シャルロッテとカールを壊し、お前が魔界に戻ってくるならな」

 息子の言葉に、ハッキリとそう返した魔王は、平然とそう言った。

 そして、その言葉に、俺は手にしていた二体の人形を見つめた。

 俺が呪符を貼ったせいで、動かなくなったシャルロッテさんとカールさん。

 このままになんて、絶対にさせない!

 そう決心した俺は、魔王を見つめ、また口をひらく。

「わかりました。全て、言う通りにします」


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