甘く落ちて、溶けるまで

そんなことをしたら、椿くんを無視するなんて!とかいう文句が飛んでくること間違いなし。



だからここは、なるべく穏便に済ませたい。



「ほんと?でも、さっきからずっと手が止まってたよね?」



「な…っ、」



私を心配するように見えて、この男は腹の奥底で笑っているのだ。



勉強し始めたのも、こうやって私をからかい弄ぶため。



爽やかイケメンに見せかけた、ただの腹黒男。



「…気のせいだと思いますよ。そんなに私を見ている暇があるんだったら、皆さんに教えてあげては?」



そんな奴の前で簡単にぼろを出すような私じゃないってこと、覚えておいてよね。



「じゃあ、私はこの辺で失礼します」



そう言って今度こそ席を立ち、そのまま図書室に向かった。



ふぅ…思わず「誰のせいで勉強が進んでなかったと思ってるんだこの腹黒男」って言っちゃうところだった。



危ない危ない。
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