秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
水面下
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結愛が飛び出した部屋は静まり返り、張り詰めた空気が漂う。

血相を変えた結愛に、驚きを隠せない。

いきなりキスしたことを、彼女は怒ったのだろうか。

でも……途中から受け入れてくれていたはずだ。唇を離した後、俺を見つめた瞳は、確かに熱があった。

突然のことに、目の前にいる父や宮森の存在はすっかり頭から消え失せていた。

「秋人さま、先ほどの女性はどちら様ですか?」

「……ああ」

宮森の声に意識を戻す。

やけに険しい顔つきの父と宮森が、俺の返事を待っていた。

「会社の生け込みを頼んでいるフローリストだよ。彼女は古くからの付き合いなんだ」

結愛のことを、ふたりには紹介したことがない。

彼女の消息が分からなくなったときも、父たちに弱い姿を見せるのは自分のプライドに反することで、一切そんな素振りを見せてこなかった。

もし今、彼女と付き合うことができていたら、大切な人だと迷わず伝えていただろう。

ただ今はこんな関係性で、結愛のことを許可なく詳しく話す必要はない。

「フローリスト? 自分の店を構えている方ですか? それとも花屋に所属している方で?」

宮森は彼女のことに興味があるらしい。

あんなふうに部屋を出ていかれたら、興味を持つのも致し方ないのかもしれない。

「花屋から出張に来てもらってるよ、港区では有名なようだが」

「へぇ。呼び捨てにするくらいに、やけに親し気だ。ようやくお前も気になる女性ができたのか」

父は微笑ましい素振りで俺に尋ねるが、目の奥がまったく笑っていない。

「……いずれ紹介するよ。ところで、雪平梢がどうしたんだ?」
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