秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

秋人は迷うように口ごもると、ふいに照れくさそうな表情でこちらを振り返った。

「パパがいいな。……もう、大人になってもずっとパパでいいかもしれない」

秋人が照れるのも珍しい。

今の娘を愛する彼の表情は私の父に通づるものがあった。

「ふふ、あやめならきっと望む限り呼んでくれるよ。秋人のことが、大好きだから」

「そうだといいんだが」

秋人の綺麗な横顔を見て、何十年先もこうして彼の隣に立っていたいと思った。

あやめが巣立っても、愛する彼とこうして他愛のない話を交わす。

今の私が望むことは、フラワーアーティストになることでも、あやめを私の手で幸せにすることでもない。

ただただ、目の前にあるこの幸せを守り続けたい、それだけだった――。
< 133 / 176 >

この作品をシェア

pagetop