秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

季節は巡り……春がやってきた。

今日は家族水入らずで、家の近所にある森林公園で花見をする予定だ。

街路樹は芽吹き、桜の花びらの絨毯にあやめを乗せたベビーカーの轍ができてゆく。

「ご飯作りすぎちゃった。みんな、今日はもりもり食べてね~」

「はーい!」

「油断してると俺が全部食べるぞ? 自分たちのものは先にとっておいてくれよ」

俺の呼びかけに、結愛とあやめは明るい笑い声をあげてくれた。

今から一カ月前、あやめが保育園の春休みに入るタイミングで、三人で暮らせる一軒家を都内に購入した。

三人で暮らし始めてから、極力家を空けていない。

出張も、なるべく即日で帰れるように調整している。

結愛は無理をするなと言っているが、俺はふたりといっしょに過ごしていたい。

三人で過ごす賑やかな時間が、とても幸せなのだ。

それに……仕事に対するモチベーションも、以前とは全く違う。

自分や、会社の利益のためではなく、今は家族が末永く笑顔で暮らしてゆけるよう頑張りたいと思っている。

「ぱぱ、だっこして!」

あやめが突然後ろを振り返り、ベビーカーから身を乗り出して俺に手を伸ばす。

「もう少しでつくけど……いいぞ」

「もう、秋人はあやめに甘いんだから」

結愛に呆れた顔で笑われてしまう。

あやめを抱きかかえ、結愛に似たやわらかい頬に自分の頬を摺り寄せる。

「結愛にもあやめにも、俺は一生甘いと言い切れるよ」
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