秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

十一月二十日の、結愛の二十二歳の誕生日。

午前零時を、彼女と通話という形で迎えた。

数日前に家に帰れないと悟った俺は、二十二本の薔薇の花束を前日に家に届く手配をしており、結愛は無事に受け取ってくれていたのだ。

『今日の夜には必ず戻れるようになんとかする。結愛、愛しているよ』

『私も……秋人を誰よりも愛してる』

愛を確かめ合った後、少しだけ他愛のない話をして電話を切った。

結愛の声が少し寂しそうだったのが気がかりだったが、特に心配はしていなかった。

夜には彼女を抱きしめられると、信じて疑っていなかったから……。

この日、葛城堂の社長は俺が適任だと全会一致で正式に決定した。

自社のフリマアプリは副社長である、橋本に継いでもらうことになり、今後俺が監督役として携わる話でまとまった。

薫が死んで一週間と数日。

俺へ常に愛をくれていた彼の意思を継ぐ決意も固まっていた。

あとはすべて、結愛に打ち明けるだけだった。

でも……現実はとことん残酷だった。

ふたりの家に戻ったその日の夜、俺にさらなる地獄が待っていた。

愛する結愛がいない。彼女の荷物もすべて。

机には、【今までありがとう】との置手紙と、二十二本の薔薇の花束だけが部屋に置いてあったのだ……――。
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