元傾国の悪女は、平凡な今世を熱望する
「その類まれな美貌のせいで、自分でもよく分からないうちに皇帝とその弟に見初められまして。おまけにわたしを巡るって大義の元に、皇帝派と皇弟派の間で戦争が起こったんです。
当然、そんな訳の分かんない理由で戦争が起こったもんだから、民はカンカンで。
なんやかんやあった後、戦争の原因を作ったわたしが戦犯として処刑された――――っていうのが前世のわたしの人生でした」


 言葉にしつつ、なんて滑稽な話だろうって自分でも笑えて来る。


「――――なぁ、それのどこが『悪女』なわけ?」


 けれど殿下は、何とも言えない表情を浮かべつつ、そっと首を傾げた。


「そんなこと、当事者のわたしに聞かないでください。周りがそう呼んでたってだけで、寧ろわたしの方が理由を知りたいぐらいなんですから――――っと!」


 答える最中、殿下がわたしの眼鏡をヒョイッと取り上げる。視界を遮るものがなくなって、何だかとても落ち着かない。心臓の辺りがジリジリと焼ける感覚がした。


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