あの日ふたりは夢を描いた
「言うつもりはなかったんだけどね。だけどやっぱり、言えてよかったかな」

僕はただ、彼女のその照れた横顔を見つめることしかできなかった。

彼女を改札前で見えなくなるまで見送り、家に戻ってきた。

リビングに入ると夕食がラップをして置かれている。

「真白ちゃん、駅まで送ってきた?」

「あぁ、今頃電車に揺られてると思う」

「素敵な人ね、彼女。とっても謙虚で優しそうで」

母さんは洗った食器の水気を布巾で取りながら、食器を片付けていた。

「あぁ、とても素敵な人さ」

食事をしようと俺は席に着いてお皿にかかったラップを外した。
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