あの日ふたりは夢を描いた
「なにも話してないの?」

母さんが真面目なトーンで聞いてきた。言いたいのは病気のことだとすぐにわかった。

「話さないよ。これからも話すつもりはない」

母さんの顔を見ずにそう答え、箸を持ってハンバーグを一口口に運んだ。

「……そう」

母さんはなにか意見を言うわけでもなく、小さくそう呟いた。

「大切な人に、いつも笑っていてほしいんだ」

最近よく笑うようになったきみを愛おしく思っていたから。

笑っているきみが好きだから。

きみの笑顔が大好きだから。

……僕のことは、知らなくていいよ。
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