「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
 彼女は、大昔の年配の女性が着用していたような古風なドレスを着用している。

「バッハシュタイン公爵令嬢っ!」

 彼女は、視線が合うなりキレた。

 いつもそう。まるでわたしが彼女の一族みんなを呪い殺したかのように攻撃的に接してくる。

「突然、やって来るなんてどういうことなのですか? 皇太子妃候補の権利を放棄したのでしょう? それをいまさら……。わたしたちを振りまわしてなにが面白いというのです?」

 彼女を振りまわしたことなんて一度もない。物理的には、だけど。

「シュナイト侯爵夫人」

 余裕の笑みを浮かべてみせた。

 彼女は、若くてきれいなご令嬢たちをいびりたいだけ。いびって泣き出したり、ひたすら謝罪するのを見たりきいたりして快感を得ている。

 だから、彼女はわたしのことが大嫌いだし苦手。

 なぜなら、わたしは絶対に泣かないし謝罪しないから。





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