「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?

親衛隊の隊長フリードヒ・シーゲル

 庭園へとさしかかった。

 ここは、子どもの頃いつも遊び場にしていた。

 咲いたばかりの花々をちぎったり、出たばかりの芽を踏んづけたり、目につくあらゆるものを抜いたり刈ったりした。

 懐かしいわね。

 立ち止まり、たくさんの篝火の中に浮かびあがっている東屋とその奥に広がる森を眺めた。

 森の中で探検をして行方不明になったり、コルネリウスをかばって大ケガをしたりしたっけ。

 しばらくの間、昔を懐かしんだ。

 また歩き始め、宮殿を通り抜けてそのまま客殿へ行くことにした。

 皇太子妃候補たちは、客殿に部屋を与えられている。

 奥の宮殿は、皇族に認められた者しか入ることを許されない。つまり、皇族の一員でないと入ることが出来ない。

 もっとも、皇太子コルネリウスとは乳兄妹であるわたしは、暗黙の了解で出入りしていたけれど。

 そんなことを考えつつ、宮殿へと続く石段を上がって宮殿に入った途端に衛兵たちに通せんぼをされてしまった。


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