「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?
 昨夜のサンドイッチといい朝食といい、さすがは料理長だわ。

 彼もまた、子どもの頃から世話になっている。

 わがまま放題のわたしのリクエストを、いつも完璧に応じてくれた。

 料理長こそが、わたしの夫になるべきだと思っていた時期もあった。

 というわけで、テーブル上にあった料理の数々は、等しくお腹の中におさめた。

「それで? さっきの『はやいとこやっつけてください』、というのは?」

 お腹がいっぱいになって落ち着いたから、そう尋ねてみた。

「みなまで言わせないでください。きまっていますよね?」

 なんてこと。リーゼは、わたしのことを全知全能の神かなにかと勘違いしているわ。

 まぁ、彼女の言わんとしていることはわかっているんだけど。

「とにかくひどいのです。アイ様なんてまだ古顔ですし、『悪女』っぷりには慣れていますからいいんですけど、彼女はひどすぎます。侍女たちだけでなく、執事や庭師や雑用人まで迷惑をしています。だから、最初からアイ様が目を光らせて牽制してくれればよかったのです。それを、もったいぶって屋敷へ帰ってしまわれて……」

 ちょっ……。

 心の中で絶句した。

 わたしのせい? 騒ぎの元凶はわたしなわけ? わたしが悪いの?

 というか、リーゼ。あなた、わたしをなんだと思っているの?

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