「孤高の悪女」で名高い悪役令嬢のわたしは余命三か月のようなので、最期に(私の想い人の)皇太子の望みをかなえてあげる予定です。なにか文句ある?

【最終話】死なずに皇太子妃になるわけ?

「アイ、言ってなかったかしら? 皇太子妃候補の修行が始まってからフリッツに告白されたの。もちろん、答えは『イエス』よ。修業に関しては、わたしなんてどうせ数合わせだし、殿下にも祝福してもらったからそのまま残っていたの。カサンドラに虐められるのも刺激的で面白かったし。だけど、殿下同様フリッツも告白が遅いわよね? わたしたち、両想いになって十年以上よ。やっとという感じだわ。でも、殿下も無事すませたことですし、ダブル結婚ってことで終わりよければそれでいいわよね?」
「なんですって? アポロ。あなた、コルネイのことを好きじゃなかったの? コルネイはあなたを好きなのよ」
「ちょっと待て。おれがアポロを? それだけはないない」
「ええええっ? どうしてわたしが殿下を? 全然好みじゃないわ。皇太子殿下で未来の皇帝というだけで、他にこれといってなにもないし。その点、フリッツは文武両道。強いし頭はきれるし、ちょっとデリカシーにかけるところはあるけれど、やさしくて思いやりがあるし。断然フリッツでしょう?」

 なんてことなの……。

 やはり、わたしの大いなる勘違いなわけ?

「婚約者にというのなら殿下でも充分だけど、夫にするには物足りなさすぎる。公私ともに、いろいろ大変すぎるし」

 アポロニアは、まだ毒舌を吐き続けている。

 彼女、こういう空気を読めなかったりするのよね。というか、空気以前に本人の前でそこまで言う?
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