闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 手毬は自由に求められて安心している。
 だって彼は、自分からおねだりしなくても、一生懸命奉仕してくれるから……ミチノクと違って。

「ごめんなさい、ジユウおにい、ちゃん」

 手毬は少しずつ過去のことを思い出していた。
 けれど、忘れたフリをしつづけることを選んだ。
 ときどき断片に傷つけられそうになるけれど、すべてをなげうってまで、異父妹である小手毬を手に入れようと初恋に殉じた彼を、手毬は拒めなかったから。
 自由が兄であることを思い出してしまったことだけは、けして口にしないと誓ったのだ。

 ――だって。禁忌だからと彼から離れようとしたのに、けっきょく死ねなくて、遠い国で彼のお嫁さんになっている!

「ふふ。愛してる。だからこれからも一途に愛してね、ジユウおにいちゃん」

 彼に与えられる愛が、あまりに甘美だったから。
 これからも手毬は罪深い自由をこの異国の地で愛しつづける。

 贖罪にも似た彼女の愛し方に、当の自由だけが気づかない。




 “Love Anesthesia”――fin.
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