闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
「完全に担当から外れることはしないよ。それに、自分の分野から、彼女は逸脱している」

 亜桜小手毬が目覚めたとき、早咲ができることはないのだと暗に告げている。

「それは、そうですが……」

 彼女が目覚めることを前提で、話を進めるのならば、彼の言いたいことは理解できなくもない。
 その先は、陸奥の専門分野に重なるから。

「だからだよ」

 担当患者の加害者に惹かれてしまった中年の医師は淋しそうに口を開く。

「僕は、これ以上彼女と深く関わっていたら、彼女を目覚めさせることを否定しそうで怖いんだ」
「あまり、そういった言葉を口になさらないでください」

 陸奥は両肩を竦めて、吐き出す。

「それで、先生の気がすむのなら。先生がこれ以上、患者を蔑まないのなら」


 諦めないと、誓ったのだから。


「安心してください。あとは、俺がやりますから」
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