雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 でも、私一人が残ればいい話だ。雨宮課長には東京に帰って頂いて、私だけが一泊して、明日、映画のフィルムを受け取ればいい。そう提案しようとしたら、雨宮課長が先に口を開いた。

「そうですか。じゃあ、お言葉に甘えて一泊させて頂きます。中島さん、いいよね?」
 確認するように課長がこっちに顔を向ける。
 雨宮課長も泊まってくれるの? すごく嬉しい。でも、でも、甘えていいの?

「中島さん、余計な心配している? それとも俺と一緒はイヤ?」
 黙ったままでいると課長に言われた。
「い、いえ。とんでもないです!」
 むしろ、超ラッキー。という言葉を辛うじて喉の奥に留める。

「じゃあ、決まりだね」
「は、はい」
 今朝、新幹線で夢見た事が現実になるなんて嬉し過ぎる! もうこの場で飛び跳ねたいぐらい。

「楽しんでいってね」
 緩んだ表情を浮かべる私に向かって、藤原さんが微笑んだ。
 お泊りチャンスをくれた藤原さんが女神様に見えた。
< 68 / 211 >

この作品をシェア

pagetop