ヒーロー

【2022.12】


「雪乃いらっしゃい」

 実家に着くと出迎えてくれたのは2人目出産間近の姉。もちろんいつも連絡はとりあっているけど、実際会うのは4年ぶりだ。
 建て替えた家も今風のオシャレな造りで、私が過ごした実家の懐かしさは消えてしまっていた。4年ってそんなに長い時間が経っていたのかと少し寂しく思えた。

 いつもバタバタとうるさいくらの慌ただしさで出迎えてくれる両親の姿がなかった。私が帰ってくるのを知って買い物に出ているらしい。

 この歳にもなると親から真っ先に言われるのは、やっぱり結婚の話だ。それが苦痛で実家に帰ってきたくなかったと言ったら、きっと両親は悲しむだろうけど、今、両親がいないことに少しホッとしているのをみると、やっぱり心のどこかでは触れてほしくないことなんだろうと自分で感じていた。

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