トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー

<X>という存在

マダム・ルルの応接間は、豪華な部屋だった。

家具は猫足で、優雅な曲線を描く高級品。
ゆりの花が強く香り、重厚なカーテン、調度品は、貴族が使っているものと比べても遜色がない。

これらは、この住人が商売について、相当にやり手であることを物語っていた。

「そうですの。
チェイサー様のお住まいを、
お探しなのですね。
短期間なら、私の別荘をお使いくださって、よくってよ?」

マダム・ルルは羽の大きくついた扇で、ふぁさっと自分の顔を仰いだ。

「犬と鳥がいるので、狩猟小屋とか、そんなのでいいのだが」

チェイサーは困惑ぎみに、
ブランドンとマダム・ルルの顔を交互に見た。

「いいえ、ブラントン様のお友達に粗末な小屋には、お泊めできません。
下働きの女の子も、通いでいれましょう。
掃除や洗濯をさせますから」

「ああ、それは助かる。
あそこの別荘なら、近いしな。
それでいい」

チェイサーが答える前に、ブラントンが決めてしまった。
ブラントンは、ここではよほどの太い客なのだろう。

「それでは、チェイサー様?
お願いがあるの」

マダム・ルルはしなをつくって、流し目で見た。

「前金が必要なのか?」
チェイサーが懐から、革袋を取り出そうとすると

「いいえ、うちの子と今晩、遊んでいただきたいの。
まだ、女の子になりたてで、
ちょっとレアものの子を、ご紹介するわ」

マダム・ルルはそう言うと、
スカートを翻して部屋から出て行った。

女の子になりたて・・・ってなんの事だ?

首をかしげているチェイサーの顔を見て、
ブランドンは、ニヤニヤ笑っている。

「簡単に、この国について説明しておこう。この国の子どもは、
俗にいう<フタナリ>で産まれるんだ」

フタナリ・・・・

「<フタナリ>って、両方ついているアレか!」
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