トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー
これはもうすでに、
チェイサーが、引き受けるだろうと踏んでいるようだ。

「離宮は、使用人も少ないし、
出入りもないから、問題はない。
仮眠室で寝ていれば、いいだけだ」

ジャラン・・

ブラントンが、鍵束を放り投げた。
「はぁ、まったく・・」

チェイサーが、鍵をつかみ取るのを確認すると、
ブラントンは上着を脱いで、一目散に走っていった。

あれは、よほど嫁さんを溺愛しているか、恐れているかのどちらかだ。

チェイサーは苦笑いをして、
狩人から逃げる熊のような、
ブラントンの背中を見送った。

王宮で引継ぎをして、離宮についたのは、夜の10時だった。

離宮の2階に、窓の明かりが見える。
2階はリアラン様の私室。

3階は住み込みの執事と、女の召使が2人だけだ。
料理人は、早朝に出勤するらしい。

暗いランタンの明かりしかなく、
チェイサーは、玄関の鍵を選ぶのに苦労したが、何とか玄関扉を開けた。

「ダリル、外を頼む」

そう言うと、
暗闇の木立に向かって、犬は走っていく。

ランタンをかざして、
玄関脇の、仮眠室と思われるドアをあけた。
部屋は狭いが、ベッドは大きく、清潔な部屋だ。

すぐ脇に、トイレとシャワー室も完備している。
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