君の全部になりたい【完】


「美桜様、おはようございます。」



コンコンコンと、部屋の扉を叩く音が三回して、黒いネクタイ、黒いジャケットに、ストライプのベスト、燕尾服を着た執事が入ってくる。



「秀夫さん、おはよう。」




「今まで大変お世話になりました。」




静かな部屋の中、深々とお辞儀をする秀夫さんに、涙が滲む。




私の名前は、寺門美桜(てらかどみお)、明日には高校生になる。




私の家は、聞けば誰でも知っている日本三代財閥の一つ寺門財閥の娘。





家の敷地は広大過ぎて、把握ができないほど。母屋はお城のようなデザインで、白く気品のある伝統的な建物。周りにはホールがあったり、使用人が住む家があったり、倉庫があったりする。

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