君の全部になりたい【完】
「私なんて、まだ恋だってしたことないのに。」
「…そうなんだ。」
「誠さんは恋ってしたことあるの?」
誠さんの眉毛がくっと上がるのがわかった。
「僕は、好きな人がいる…」
それは申し訳なさそうに、どこか嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに、色んな感情が詰まった、そんな表情をしている。
「恋を知ってるんだっ。」
いいな。そりゃ私より大人なわけだ。
私なんてまだまだ何も知らないお子様だから。
「うん、…僕も最近気づいんたんだ。…だから美桜さんとのお付き合いは断ると思う、ごめんなさい。」
そう言って、テーブルに頭を打ってしまいそうな勢いで謝る誠さん。
きっと、本当に誠実な人なんだね。