君の全部になりたい【完】
「何その話し方っ、執事みたいだね。」
「美桜様の執事ですから。」
秀夫さんと同じ、燕尾服を着ている爽。
いつも意地悪だった爽が敬語なんて少しおかしい。
そう、今日から爽が私の専属執事。
「よろしくね!」
「こちらこそよろしくお願い致します。」
深山爽(みやまさわ)、私の幼馴染で、二つ年上、そして秀夫さんの孫。
爽は、寺門家に仕える2人の間に生まれて、この敷地内で育ってきた私の大好きな幼馴染。
子供の頃は周りは大人だらけで、私とお兄ちゃんと、爽でよく遊んでいた。
あ、ちなみに私のお兄ちゃんは今ドバイへ留学中。
爽はちょっと意地悪で、でも私が困っているといつも助けてくれた。
兄弟みたいに一緒にご飯を食べたり、親友のように相談に乗ってもらったり、時には私のことを守ってくれるヒーローだった。
私が高校一年生に上がると同時に、爽が私の執事になることは小さな頃からの決定事項だった。