人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
急に現実味を帯びてきて、イレーナは震えた。
それを察した侍女が優しく声をかける。
「大丈夫ですよ。陛下はとてもお優しいですから」
「本当?」
「ええ。知りませんけど」
「……そう、よね」
にっこりと笑う侍女にイレーナは顔を引きつらせる。
侍女は笑顔で言う。
「私たちが知っていたらおかしいでしょう?」
「そ、それもそうね」
イレーナは肩まで湯に浸かって、小さく身体を丸めた。
(ああっ……こわい、こわい……こわいよお)
イレーナはまだ覚悟のできないまま、初夜を迎えることになった。
湯浴みを終えるとさらりとした白の寝間着を着用し、甘い香りの香水を身につける。
侍女はイレーナの髪を綺麗に梳いて、わずかに化粧を施した。
そして、準備が整ったところで侍女と使用人たちは全員そろって深くお辞儀をした。
「それではごゆるりとお休みくださいませ」
それを聞いたイレーナは胸中で呟く。
(ゆっくり休むなんてできないんだけど!)