人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「いいのよ。普段そんなに接することもないしね」
「でも、イレーナさまは妃なのです。陛下の妻ですよ? 陛下に忠誠を誓う者の態度とは思えませんよ」
「きっと事情があるのよ」
イレーナはアンジェのことを思い浮かべながら複雑な表情でそう言った。
しかし、リアは納得しない。
「どんな事情であれ、立場的にあり得ない態度です。陛下に知られたらきっと罰を与えられるでしょうね」
「大丈夫よ。私は関わらないし、平気よ」
「イレーナさまは優しすぎます。妃としてもっと偉そうにしてもいいんですよ」
「……そうね。心得ておくわ」
リアの言い分はごもっともなのだが、イレーナはとにかく騎士団長とは関わりたくなかった。
(あの現場を見なければ、もっと気持ちも楽だったでしょうけれど)
墓場まで持っていく秘密だ。
しかし、ひとりで抱えるには結構なストレスである。
(とはいえ、絶対に言えないわ)
不貞腐れる表情のリアに、イレーナはただ苦笑することしかできなかった。