人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

14、解決したようです

「くっそお……侯爵め、詰めが甘いんだ」

 黒ローブ姿の男はこっそり城を抜け出そうとしていた。
 侯爵が失敗することはある程度予想していたが、あまりにも簡単に捕まってしまった。
 予定では傭兵団が城内に押し入っているはずだったが、そちらも見る影はない。
 あの騎士団長も役立たずだったわけだ。

「まあ、いい。あいつがどうなろうが知ったことではない」

 石壁づたいにこそこそしながら、衛兵の目を盗んで裏の庭園を一気に走り抜けるはずだった。
 突如、目の前に現れたのは騎士団長。
 彼は平静を保ったまま、こちらを見て突っ立っている。

「お前、何をしていたんだ! きっちり与えられた仕事をやれよ!」

 騎士団長は黙ったまま微動だにしない。

「へんっ! 侯爵に協力する代わりに正妃と関係を持つとは、あんたもやることがエグイよなあ?」

 男がそう言った瞬間、騎士団長は動いた。
 それも目にも留まらぬ速さで、彼は男の首に剣を突きつけていた。
 剣先がわずかに首の皮に刺さり、たらりと血が滴る。

「おまっ、何を……」
「下品なことを申すな。これ以上は、貴様の首を飛ばすぞ」
「何言ってんだ? お前が首を飛ばす相手は皇帝だろう?」

 男がそう言うと、返答があったのは騎士団長ではなく、その背後からだった。

「ほう、そうか。なるほど。俺の首を取りたいやつがここにもいたのか」
「ひっ……! へ、陛下……なぜ?」

 驚愕する男に向かってヴァルクはにやりと笑った。


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