人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
そんなある日、教会のある村に小さな学校が建てられた記念の式典に、イレーナは正妃として出席することになっていた。
ヴァルクは多忙極まりなく、イレーナひとりでの公務だった。
もちろん護衛騎士や侍女のリア、そして宮廷医師も同行した。
学校を統括する責任者の挨拶と配属される教師たちの紹介は順調に進んだ。
他の町からも集まった人々であふれ返る中、イレーナは途中で気分が悪くなってしまった。
「イレーナさま、大丈夫ですか?」
「え、ええ……このくらい平気……」
なんとか笑顔を取り繕うものの、もはや限界だった。
(正直これほど酷いなんて予想していなかったわ。誰かの顔を見ても話を聞いても気持ち悪くて死にそうだもの)
せっかくのめでたい席を台無しにしてはいけない。
イレーナは式典が終わるまで何とか耐えようとした。
そんなとき、周囲がざわついた。
「あ、あれは……!」
「皇帝陛下だ!」
「まさか、陛下がこんな村に直々においでになるなんて」
「信じられない! 初めてお目にかかるわ」
「ああっ! 神さま……ありがとうございます!」
「皇帝陛下、万歳!!!」
人々が騒ぎ出し、イレーナは背後を振り返った。
そこにはきちんと正装したヴァルクがいて、驚くイレーナに向かって優しく声をかけた。
「よく頑張った。もう十分だ。あとは俺に任せろ」
「……はい」
イレーナは泣きそうになりながら微笑んだ。